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29坪の小さな土地で、舟屋のように佇む三角屋根の住まい

2026.08.13
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※本記事は住宅情報WEBマガジン Daily Lives Niigata による取材記事です。

 

宇都宮市から新潟市へ移住を決断

この春に完成した新潟市中央区のT邸は、新潟市中央区の29坪というコンパクトな土地に立っている。

シンメトリーの三角屋根が印象的な外観デザインで、車2台を止められるように1階部分の約半分はピロティに、床面積を最大限広く取れるように2階部分をオーバーハングさせているのが特徴だ。

ピロティ内の向かって右手が駐車スペース、左手が玄関へと向かうアプローチ。コンクリート平板のわずかな隙間には苔や草花が植えられており、その上では玄関を目隠しするように掛けられた亀田縞の暖簾が風に揺れていた。

ご主人は栃木県出身で奥様は小千谷市出身。2人のお子さんを育てるTさん夫婦はこの春まで家族4人で宇都宮市で暮らしていたが、新潟の暮らしに憧れて移住を決断したという。

「妻の実家への帰省で新潟には何度も来ていて、以前から新潟の暮らしがいいなあと妻と話していたんです。新潟は海も山も川もあるし、海鮮もおいしいし温泉もある。それから、新潟市が全国的に見て子どもの教育環境が整っているというのも新潟に住みたいと思った理由の一つです。あとは、空港も新幹線もあり、新潟を拠点に生活することで子どもたちにいろいろな経験をさせて上げられます。妻の実家も新潟県内ですから、何かあった時にはサポートができますし。そういった理由で新潟市に移住することにしたんです」とご主人。

工務店はインターネットで調べ、センスや性能の良さ、そして自分たちのこだわりを受け止めてくれそうな会社を3~4社絞り込んでメールを送ったという。

「去年の7月に各社にメッセージを送り、今年の3月には完成させたいという要望もあった中で、最も前向きに『やってみましょう!』という返事をくださったのが風間さんでした。風間さんのホームページの過去の事例を見て、外観デザインや明るい雰囲気、性能に関しての説明や、パッシブデザインを取り入れた設計もいいなと思いました」とご主人。

その後風間さんに土地探しから相談し、住宅街の中で南北方向に抜けがある土地を選び、家づくりを進めた。

 

ピロティ内にはお菓子作りのための厨房が

T邸の特徴でもあるピロティだが、そこには3畳の離れのような、小さなお店や事務所のような空間が設けられている。

「ここはお菓子作りやパン作りをするための厨房なんです。まだ物が片付いていないので始められていませんが、今後ここにキッチンを入れる予定です。私はこれまで米粉のパンやお菓子作りをやってきて、宇都宮ではお菓子屋さんで働いていました。新潟に引っ越すのを機に自分でもやってみたいと思い、ここでパンやお菓子を作ってマルシェなどで販売することを考えています」と奥様。

そんなワクワクする空間を通り過ぎたところはゆとりあるサイクルポート。その右手に玄関ドアがある。

 

光あふれる玄関。帰宅時のルーティーンが整う動線も

スライド式の玄関戸を開けたところがこちら。

正面に1坪の玄関土間があり、その左手は吹き抜けを兼ねたオープンな階段。2階からたっぷりと光が降り注いでいる。

入ってすぐ右手の壁に囲まれた空間はシューズクロークで、そこを通り抜けたところには洗面台が設けられている。

帰宅して靴や上着をシューズクロークに収納し、洗面スペースで手を洗う。そんな動きが自然に行われるような動線がつくられている。

玄関ホールに面した2つの建具の先にあるのは9畳の子ども部屋。将来的には間仕切りをして4.5畳の2室に分けられる設計だが、現在は家族4人の寝室兼子ども部屋として活用している。

オープンなつくりの階段は、段鼻がなくジグザグした断面が目を引くデザインで、風間さんがこれまで手掛けてきた住宅で幾度となく採用しているスタイルだ。

スチールの手すりやワイヤーといった細く軽やかな素材を使うことで余計なノイズが消え、シンプルな階段が一層美しく目に飛び込んでくる。

 

こだわりの家具と植物が心地いい2階リビング

そうして階段を登り切ったところがT邸のLDK。南側の壁面の端から端まで、さらに両サイドにも設けられた窓から室内にたっぷりと光が注いでいる。

勾配天井が気持ちいいLDKの床は120mm幅のオークの挽き板のフローリング。天井には着色したラワン合板を張ってコントラストのある空間に仕上げている。

キャビネットは以前から使っていたというイギリス製のヴィンテージ。ソファはPACIFIC FURNITURE SERVICEのSTANDARD C SOFA – 3P。

味わいのあるダイニングテーブルはクラッシュゲートのメルツ ダイニングテーブル。7~8年使い込んだことで天板のラッカー塗装がところどころ剥がれ味わいが増している。

新品とヴィンテージの家具が混じり合っているが、全体のトーンが統一されているため、バラバラになることなく空間に見事に調和している。

「南と北に窓があり、直線的に明るく見えるのがいいですね。天井のラワンは色を入れるかクリアのオイル塗装にするか悩んだところですが、濃い茶色系が好きだったので色を入れてもらいました。メリハリが利いて良かったなあと思っています。

床は前の家ではパイン材を使っていましたが、床板が縮んで隙間ができて、そこにごはん粒などの食べかすが落ちて取れなくなったりしていて(笑)。それで今回はオークの挽き板を選びました」(ご主人)。

庭がない狭小地ではあるが、日々リビングで緑を感じながら暮らせるように、日当たりのいい窓辺にはずらりと植物を並べている。

窓の目隠しは桐材を使ったウッドブラインド。周囲の住宅からの視線を程よく遮りつつ、木ならではのやわらかさと温かさがリビングを包み込む。

「前の家でブラインドを使っていて、光の加減を調整できることや、すべて閉めた時の遮光性も気に入っていたので最初からブラインドにしようと思っていました。ウッドブラインドはこの家の雰囲気にもなじみますし。

昼間は羽を開いて光を採り込み、夜はすべて閉じることで一面が木の雰囲気になる。そんな表情の違いもいいですね」(ご主人)。

 

空間に合わせて最適化したL字型の造作キッチン

この家の南側にあるリビングから北側を見ると、中央に設けられた廊下が一直線に北側の端まで伸びており、奥のすりガラスから光が入ってきているのが見える。

29坪という狭小地で抜け感・開放感をつくりたかったというご主人の希望は、建物の奥行いっぱいに使った直線で叶えられた。

「配管の構造上、水回りがある北側に行くにつれて床が高くなっていきますが、そっちからリビングに来るとだんだんと広がっていく感じがして好きですね」(ご主人)。

キッチンは風間建築事務所が得意としている造作キッチン。

廊下を確保する都合上、一般的な対面キッチンにする場合は幅2.2m程度と若干コンパクトになってしまう。そこで壁側も活用できるL字型の造作キッチンにすることで一般的な幅2.55mよりも広いワークトップを実現した。

コンロを奥の壁側に寄せることでダイニング側への油跳ねも抑えられるという利点もあり、ミリ単位で寸法を決められる造作ならではの絶妙なフィット感がある。

「前住んでいた家は規格住宅だったので決まったパッケージのキッチンでしたが、今回は自由設計なので広めにつくって頂きました」と奥様。

壁面にはシンプルながらも質感のいいタイルを張って上品にまとめている。

キッチンを囲むラワン材の壁にはラワン材の棚を取り付け、コーヒーの道具やお気に入りのカップを飾りながら収納。まるでお店のような一角ができ上がっている。

 

吹き抜けとリビングを見渡すオープンなスタディースペース

キッチン横の吹き抜けを見下ろしながら2階の奥に進むと、すぐ右手にはオープンなスタディースペースが設けられている。

「以前は小学生の娘がどこで勉強をやったらいいんだろう?という感じだったので、スタディースペースをつくりたかったんです。デスクの横にはランドセルを置く場所もありますし、今はそこに座って進んで宿題をするようになりましたね」(奥様)。

「スタディールームや書斎って壁向きのデスクが多いですけど、ここは顔を上げればリビングが見えるので気分転換にもなります。親からしてもリビングやダイニングからよく見えるので声かけがしやすいのがいいですね」(ご主人)。

 

機能性と回遊性が考えられた水回り&寝室ゾーン

スタディースペースを通り抜けた先は、寝室・クローゼット・トイレ・洗面スペース・ランドリールーム・浴室がまとめられたプライベートなゾーン。

廊下を1段上がった右手は、縦長のすべり出し窓から神秘的な光が注ぐトイレ。奥にはトイレットペーパーや掃除道具などを隠して収納できる造作の棚があり、こちらは風間さんの定番の仕様になっている。

そして、廊下にあるのは幅約1,800mm、奥行500mmの造作洗面台。幅広の造作洗面台は風間建築事務所のスタンダードだが、こちらは廊下兼用の省スペースタイプ。

とはいえ2~3人で並んで使える広さがあり、収納力のある3面鏡も備えられている。タイルや引き出しの仕様はキッチンとそろえて統一感をつくり出しているのもポイントだ。

そして廊下の突き当たりには約2.6畳の脱衣室兼ランドリールームがある。幅1,365mm×奥行3,185mmという寸法は洗濯機や収納棚がちょうどよく納まり、着替えや物干しなどの作業も窮屈に感じることなくできるバランスのいい広さだ。

「前の家はバスタオルやパジャマを置くところがなく不便でしたが、ここでは棚を付けて頂いたのでとても使いやすくなりました。折り畳みの台もあり、服をたたむ作業もしやすいですね」(奥様)。

ここから隣接するウォークインクローゼットを通り、現在は予備室になっている主寝室、廊下へと抜けられる回遊動線がつくられている。

 

利便性のいい中央区で新潟暮らしを楽しむ

「住み始めて3カ月程ですが、どこに行っても明るく開放的なのがいいですね。時間帯によって光の感じが変わっていくのも好きです。ピロティがあるので雨の日に車を降りる時、『よーいドン』で走ることもなくなりました(笑)。

住む場所も郊外から市街地に変わったので、通勤もごはんを食べに行くのも歩いて行けるようになりましたし、新潟のスーパーは宇都宮では見なかった珍しい魚が売られているので、買い物に行くのが楽しいです」(ご主人)。

「玄関が広いのもいいですし、靴を下足入れに入れて、手を洗って…という動線もいいですね。洗濯物をすぐ隣のウォークインクローゼットにしまえるのも便利です。それからキッチンが壁で程よく囲われていて、段差が腰を掛けるのにちょうどよく、ちょっとした癒やしスポットになっています(笑)」(奥様)。

設計をした風間さんは、「29坪の狭小地でいかに広く、風通しをよくするかが至上命題でした。南北両方の道路に接していたので、建ぺい率が+10%になり70%まで使えたのはこの敷地のメリットで、それをギリギリまで活用しています。

2階リビングの南側を全面窓にするのは構造計画が難しく苦労するところでしたが、目立ちにくいブレースを入れるなどの工夫をして耐震等級3をクリアしています」と説明する。

住宅街の中で現代的な舟屋のように佇む三角屋根のT邸。人生や日々の暮らしを船出に例えるならば、この凛とした住まいは舟の拠点となる舟屋のように、新潟で新たな暮らしをスタートしたTさん家族の拠り所になっている。

 

T邸
新潟市中央区
延床面積 119.65㎡(36.19坪)、1階 54.65㎡(16.53坪)、2階 65.00㎡(19.66坪)

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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